大高博幸さんの 肌・心 塾
2015.12.15

大高博幸のBaygiare.info通信(319) 『マイ・ファニー・レディ』『あの頃 エッフェル塔の下で』『ディーン、君がいた瞬間』『ヴィオレット』『消えた声が、その名を呼ぶ』 試写室便り Vol.106

myfunnylady
cSTTN Captial,LLC 2015

人生が輝き出す街、
ニューヨーク・ブロードウェイ。
きっかけは 思いがけない
3万ドルのプレゼント!?
ひょんなことから交錯してゆく
男と女たちの おとぎ話。

『ペーパー・ムーン』の ピーター・ボグダノヴィッチ監督 13年ぶりの最新作。

マイ・ファニー・レディ
アメリカ/93分
12.19 公開

【STORY】 ニューヨーク5番街のバーでインタビューを受けるハリウッドスター、イザベラこと〝イジー〟。かつて高級コールガールをしていたことも、あっけらかんと天真爛漫に語る彼女は、〝お客〟として出会ったブロードウェイの演出家 アーノルドと過ごしたロマンティックで魅惑的な一夜を振り返る。アーノルドから「君の将来のために 3万ドルをプレゼントする」という奇妙な申し出をされ、人生が一変した日のことを……。
アーノルドの妻が主演を務める舞台の オーディションを受けることになったイジー。舞台を成功させようと奔走するアーノルド。アーノルドの妻に好意を寄せるスター俳優。イジーに一目惚れする常識人の脚本家。その恋人で〝人の話を聞かない〟セラピスト……。はたして、アーノルドの舞台は 無事に初日を迎えることができるのか!?(仮プレスブックより)

監督は『ペーパー・ムーン』(1973)『ラスト・ショー』(’90)の P・ボグダノヴィッチ。
製作は『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014、通信(226))の監督 ウェス・アンダーソンと、『ファンタスティック Mr. Fox』(’09、共同脚本、通信(49))『フランシス・ハ』(’12、監督・脚本・製作)の ノア・バームバック。
第一主役(アーノルド役)は『ミッド・ナイト・イン・パリ』(’11、通信(105))の オーウェン・ウィルソン。
原題は フランク・シナトラの十八番の名曲と同じ〝SHE’S FUNNY THAT WAY〟(たゞし、その曲の 歌詞・ストーリー性とは全く無関係)。
僕にとって本作は「これだけ条件が揃っていれば、観ずにはいられない!」という映画。

内容は、奇妙な偶然の連鎖が巻き起こすブロードウェイ界隈の人間模様…、クスクス笑いを誘う 大人のための ロマンティック・コメディ。カリカリ・ピリピリ・ドタバタしている登場人物たちの 絡み & 早口台詞の連発は、特に1930年代の エルンスト・ルビッチの 名作ソフィスティケイテッド・コメディの趣をも感じさせます。

アーノルド役の O・ウィルソンは『ミッド・ナイト…』から約3年の間に 少し老けた感じですが、そのボーイッシュな個性は健在。彼の妻 デルタ役の キャスリーン・ハーン(最新作『午後3時の女たち』よりは数段スマートな役柄)、脚本家 ジョシュ役の ウィル・フォーテ(『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(’13、通信(207))と比較すると 出番が少ないながら 存在感あり)、セラピスト役の ジェニファー・アニストン(肌に透明感が不足してはいるものの コメディエンヌとして成功、大爆笑を買っている)らの競演も見もの。イジー役は、今春「ミュウミュウ」のキャペーン広告モデルにも抜擢されて人気急上昇中の イモージェン・プーツ。But、僕が最高だと感じたのは、オースティン・ペンドルトン演ずる裁判官のペンダーガスト(イジーの老・上顧客)と、ジョージ・モーフォゲン演ずる不可解な探偵(ジョシュの父親)。このふたりの脇役、浮世離れした いゝ味を醸し出しています。

誤解されると困りますが、英会話の得意な方々には 特に特にオススメの一作です。

 

anokoroeffel
©JEAN-CLAUDE LOTHER – WHY NOT PRODUCTIONS

パリと田舎町に離れて暮らす恋人たち。
30年後、
彼女が綴った幾千もの愛の言葉を読み返し、
初めて気づいた真実とは――?

名匠デプレシャン監督が贈る
〝一生に一度の身を焦がすような恋〟

あの頃 エッフェル塔の下で
フランス/123分/R15+
12.19 公開

【STORY】 外交官で人類学者のポールは、長かった外国暮しを終えて フランスへ帰国する。ところが 空港で、彼と同じパスポートを持つ〝もう一人のポール〟がいるという 奇妙なトラブルに巻き込まれる。スパイ疑惑をかけられた その男との出会いを思い出したことをきっかけに、過去の記憶が 次々と甦るポール。幼い頃に亡くなった母、守ってくれた大叔母、父との決裂、弟妹との絆。ソ連へのスリリングな旅、そしてエステルとの初恋。パリの大学に通うポールと 故郷に残ったエステルは、毎日 手紙を書き綴った。変わらぬエステルへの想いに気づいたポールは、数十年ぶりに 彼女からの手紙を読み返し、ある真実に思い至る――。(プレスブックより。一部省略)

恋愛映画の金字塔『そして僕は恋をする』(1996)で、フランソワ・トリュフォーの再来と謳われた アルノー・デプレシャン監督の最新作。今回のテーマは、大人ならば 誰もが胸に秘めている〝生涯で いちばん思いつめた 身を焦がすような恋〟。人生も半ばを過ぎた主人公が、熱烈な恋をした青春の日々を追想するという趣向。特に 若き日の主人公と その恋人に対する温かい眼差しが 感動を呼び、第68回 カンヌ国際映画祭の監督週間で SACD賞を受けています。

映画は まず 現在のポール(マチュー・アマルリック)を映し出し、少年期に遡って 青春期のポール(カンタン・ドルメール)の描写へと続くのですが、僕は やはり、青春期の部分に最も強く惹きつけられました(賛否両論あるでしょうが、癇癪持ちの少年期のポールと 現在の風変わりなポール、青春期の純真で物静かなポールとが、容貌・性質共に 同一人物とは思いがたいフシが、この映画にはあります。監督は 敢えて意図的に そう演出したようですが、その点、僕自身は 少々抵抗感を覚えました)。

青春期のポールを演じている Q・ドルメール(’94年生まれ)は、これが映画初出演。エステルを演じているのは、本作の撮影当時 リセに在学中だった ルー・ロワ=ルコリネ(’96年生まれ)。このふたりの起用によって、本作は 心に沁みいる映画となっています。
初めてのセックスの後、ポールがエステルに「ゼロ? それとも…」と、何回イッたかを聞くシーン等の 愛らしさ・いじらしさ…。普通ならイヤらしく聞こえるだけの台詞が、崇高な印象さえ放っているのですから、凄いです。彼らのインティメートな場面の中には、次のような会話も…。
①「命がけで愛されたコトなんて、私、ないわ」「僕が そうする」
②「知性を ひけらかす女は 好きじゃないんだ。けど、君なら いいよ」「私、あなたを やりこめたりなんて しないわよ」

どんな瞬間に そう感じたかは想い出せませんが、セックスを伴った愛情を友情に変えるのは、やはり難しいコトだなぁと感じさせる場面が 本作にはありました。また、愛し合う者同士、遠く長く離れていては いけないとも…。

P.S. 現在のポールを取り調べる情報局の年配の男性役を、アンドレ・デュソリエ(『パリよ、永遠に』(通信(277))で、スウェーデン総領事=パリを守り抜いた男を好演)が演じています。アクの強い押し出しの M・アマルリックに対して、サラリと軽妙に演技する A・デュソリエの存在感には 改めて感服。日本には 彼のような男優は ひとりもいない。本当に貴重です。

 

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Photo Credit:Caitlin Cronenberg, (C)See-Saw Films

華々しい成功と、突然の死の直前。
今 明かされる、ジェームズ・ディーンと写真家との2週間の旅。

彼の<今>を永遠に――
それが僕の使命だった。

ディーン、君がいた瞬間(とき)
カナダ=ドイツ=オーストラリア合作/112分/PG12
12.19 公開

【STORY】 1955年、アメリカ。マグナム・フォトの野心溢れる若手写真家 デニス・ストックは、無名の新人俳優 ジェームズ・ディーンとパーティで出会い スターとなることを確信、LIFE誌へ載せるための密着取材を持ち掛ける。ディーンを追いかけ、LA、NY、そして彼の故郷のインディアナまで旅するストック。初めは心が通じ合わなかった二人だが、次第に互いの才能に刺激されていく。そして彼らの運命だけでなく 時代まで変える写真が、思わぬ形で誕生するのだが――。(試写招待状より)

1955年の1年間に『エデンの東』『理由なき反抗』『ジャイアンツ』の3本に主演した後、その年の9月30日、自動車事故により 24歳の若さで亡くなった 20世紀最大のスター J・ディーンと、彼を時代のカリスマとして大々的に紹介するコトに成功した写真家 D・ストックとの物語。
伝記映画的な面白さも十分にありますが、むしろ本作は ディーンとストックの〝人生の一瞬〟に光を当てゝいます。ディーンの余り知られていない影の部分が もう少し描かれていれば、彼の反抗的な要素が浮き彫りになったはずとも思うのですが、その分、ストックの孤独感が ディーンの それと重なって、映画に奥行きを与えています。

ディーンを演ずるという難題を見事にクリアしたのは、『アメイジング・スパイダーマン2』(’14)の ハリー・オズボーン役で知られる デイン・デハーン。
ストック役は、『リメンバー・ミー』(’10、通信(66))や『コズモポリス』(’12、通信(147))に主演した ロバート・パティンソン。従来の青少年風のイメージから 大人の男へと完全に脱皮している彼の演技と佇まいには、とてもとても驚かされました。

個人的に興味津々だったのは、① ワーナー・ブラザース社内の描写と、社長 ジャック・ワーナー(ベン・キングズレー)の言動、② マグナム・フォトのNY支局長 ジョン・モリス(ジョエル・エドガートン)の言動、③ 時代を象徴するジュークボックスが置かれたカフェバーで、ディーンが アーサ・キット(当時人気絶頂の黒人ポピュラー歌手。演じている女優名は不明)と談笑したり踊ったりする場面でした。
監督は、『ラスト・ターゲット』(’10)のアントン・コービン。

 

© TS PRODUCTIONS - 2013
© TS PRODUCTIONS – 2013

新しい世界が幕を開けるパリ。
彼女の小説は、時代を変えた。

人は、全人生をかけて 芸術家になっていく。

ヴィオレット――ある作家の肖像――
フランス/139分/PG12
12.19 公開

【STORY】 1907年、私生児として生まれたヴィオレット。母親に愛されない想いを抱きつづける彼女は、やがて小説を書くことに目覚める。その後、ボーヴォワールと出会い、その助けによって、1946年に処女作「窒息」を出版。ボーヴォワールだけでなく、カミュ、サルトル、ジュネら 錚々たる作家に絶賛されるが、女性として初めて、自身の生と性を赤裸々に描いた その小説は、当時の社会には受け入れられなかった。傷ついたヴィオレットは 精神さえも病むが、ボーヴォワールの支えによって書き続ける。そして彼女は 南仏プロヴァンスの村と出会う。パリを離れ プロヴァンスに移り、そこで自身の集大成ともいえる「私生児」の執筆にとりかかるヴィオレット。母との確執、報われぬ愛、そしてボーヴォワールとの絆。彼女は、人生のすべてを〝書くこと〟に注ぎ込んでいく……。(プレスブックより。一部省略)

実在の女性作家で〝ボーヴォワールの女友だち〟とも呼ばれた ヴィオレット・ルデュックが、人生に もがき苦しみながら、プロヴァンスの明るい光の中で 自分自身を見い出すまでの物語。
監督は、『セラフィーヌの庭』(’08)でセザール賞7冠に輝いた 名匠 マルタン・プロヴォ。
ヴィオレットを演ずるのは、セザール賞を2度受賞した エマニュエル・ドゥヴォス。さらに ボーヴォワール役を サンドリーヌ・キベルラン(『屋根裏部屋のマリアたち』(’10、通信(113))、『愛して飲んで歌って』(’14、通信(272))で好演)、ヴィオレットを経済的に援助するゲランの経営者 ジャック・ゲラン役を オリヴィエ・グルメが演じています。

まず見惚れたのは 撮影の美しさ。特に赤が強く、にじみ出るような色彩効果が素晴らしい。ごく一部で 照明に凝りすぎている印象も受けましたが、総じて1940年代後半のフランスの雰囲気を色濃く映し出しています。

印象に残ったシーンは……、
1) 戦後の食糧難の時代の、森の中での闇市の場面。
2) ある夜、セーヌのほとりを歩きながら、ヴィオレットが 感情任せに ボーヴォワールを罵る場面。それを冷静に受け止めて、逆に叱咤激励するボーヴォワール(この場面に限らず、ボーヴォワール役の S・キベルランが、いつも以上に適役を好演している)。
3) レンガ職人のルネが、ヴィオレットの後を追う田舎道の場面。それに続く、ふたりのラヴシーンの上品なエロティシズム(生々しくもあるのに 品位が保たれている)。
ガッカリさせられたのは ジャック・ゲランの描き方。永遠の香水『シャリマー』を調香した彼は、もっと夢想的で詩的で、ロマンティックでハンサムな人物だったと僕は信じます。

 

(c)Gordon Muhle/ bombero international
(c)Gordon Muhle/ bombero international

娘を探して地球半周、声なき父の8年間。
その先にあるものとは――。

知られざる歴史的悲劇から始まる、
壮大な旅。

消えた声が、その名を呼ぶ
ドイツ=フランス=イタリア=ロシア=カナダ=ポーランド=トルコ合作/138分/PG12
12.26 公開

【STORY】 1915年、オスマン・トルコ。鍛冶職人 ナザレットの幸せな日々は 突然 終わった。アルメニア人であるがゆえに 妻と双子の娘から引き離され、砂漠での強制労働の末に、喉にナイフを刺され 命を奪われそうになる――。仲間が次々と命を落とす中、奇跡的に生き延びるも、声を失ったナザレット。もう一度、生き別れた娘に会いたい―― その想いは たった一つの生きる希望となり、平凡だった男を トルコの灼熱の砂漠から、海を越え、はるか遠く アメリカ・ノースダコタの雪降る荒れ地へと導いていく…。(試写招待状より)

生き別れてしまった父親を捜して 娘が旅をする『耳に残るは君の歌声』という佳作がありましたが、題名に共通したニュアンスを持つ本作は、父親が 生き別れた双子の娘を捜して 歩き続ける物語。
100年前、オスマン・トルコ国内で起こった〝アルメニア人虐殺事件〟(犠牲者数は 100万人とも 150万人とも言われている)に端を発し、生き残りはしたものの 声を失くしたナザレットが、トルコから シリア、レバノン、キューバ、ミネアポリス、そしてノースダコタへと 8年間も旅を続ける…。その 何としても娘に再会しようという 一縷の望み・ひたむきさが観る者の胸を打ち、上映時間138分が短いくらいに感じられます。

特に印象に残った場面は……、
1) 奴隷同様に働かされていたナザレットが、兄や同胞たちと共に処刑される谷底の場面。処刑人のひとりである メフメトが 殺害を躊躇したため、ナザレットは 辛うじて生き残る。メフメトは 暫くの後に戻ってきて、ナザレットを救出し、精一杯看護する。
2) ひとり 旅を続け、砂漠で倒れてしまったナザレットの耳に、愛する妻の歌声が聞こえてくる場面。その歌声に導かれ、彼は立ち上がる。
3) ナザレットが石鹸工場主の老人と出会う草原の場面。その老人 オマル・ナスレッディンの 神々しいまでに 優しい顔・表情。
4) 石鹸工場での製造作業場面(日本でも人気発売中の「ガミラシークレット」のソープは、この場面のような工場で練り上げられているのかも)。
5) キューバのハヴァナ辺りの全ての場面(ここで物語は大きな展開を示すのですが、1921年当時のキューバの雰囲気が、街を歩く人々の姿を含めて 見事に再現されている)。
6) キューバの祭りの夜、仮設の映画館で、ナザレットが チャップリンの映画『キッド』を観る場面。彼は大勢の観客と共にドタバタシーンで爆笑したものの、チャップリンと孤児のキッドとの別れのシーンに感涙し、映画が終っても立ち上がれずにいる。その時 偶然、かつての弟子 レヴォンと 6年ぶりに再会し、娘たちは生きていると聞かされる。
7) ナザレットが暴力を振るう 2場面(一度は娘の仕返しのために、もう一度は自分の命を守るために)。
8) 仕事仲間数人に 強姦されそうになった通りすがりの若い娘を、孤軍奮闘して助ける場面。
9) 雪の積もるノースダコタの 田舎町でのラストシーン(誰も泣かずには観られないと思う)。

ナザレットを真摯に演ずるのは、『預言者』(’09)『ある過去の行方』(’14、通信(215))の タハール・ラヒム。
監督は『ソウル・キッチン』(’11)の ファティ・アキン。虐殺シーン、何人もの死体が投げ込まれている砂漠の井戸、売春宿に送り込まれたアルメニア人の娘や少女たちetc、残酷な場面の強調を 意識的に避けている 演出・描写に、アキン監督の 感性・知性・節度ある人格が 表われています。物語に興味を感じた皆さんは、その点、こわがらずに観てください。

 

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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(個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸のBaygiare.info通信 http://baygiare.info/article_category/ohtaka/

 

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