大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.2.3

『 今夜、ロマンス劇場で 』『 ぼくの名前はズッキーニ 』『 スリー・ビルボード 』『 ローズの秘密の頁 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 Vol.433 】

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©2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

好きです。たとえ触れることができなくても。

映画のヒロインが目の前に現れたら…。
〝 逢いたい気持ち 〟が奇跡を起こす!

今夜、ロマンス劇場で
日本/ 109 分
2.10 公開/配給:ワーナー・ブラザース映画

【 STORY 】 映画監督を夢見る青年・健司が 密かに想いを寄せるのは、通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた 古いモノクロ映画の お姫様・美雪。今は誰も見なくなった その映画を、毎日のように くり返し見ていた健司に、ある日 奇跡が起きる。美雪が 健司の目の前に 突然 現れたのだ。その日から 2 人の不思議な同居生活が始まった。モノクロの世界しか知らない美雪に カラフルな現実世界を案内する健司。同じ時間を過ごす中で、2 人は次第に惹かれ合っていく。しかし、美雪には ある秘密があった。現実の世界に来るための代償で、人の ぬくもりに触れたら 美雪は消えてしまうのだ。そんな中、美雪は 映画会社の社長令嬢が 健司に想いを寄せていることを知る。( チラシより。一部省略 )

高嶺の花のお姫様・美雪役の綾瀬はるかと、ウブで少年っぽい一途な青年・健司役の坂口健太郎のコンビが、何とも魅力的な一篇。お互いに引き立て合いながら しっくりと融け合っていて、本作を観た方は、誰もが ふたりのファンになってしまうコト、確実です。

物語は、ファンタジックな ロマンティック・ラブストーリー。時代背景は、日本映画の観客動員数が落ち込み始めてから 2 ~ 3 年後 ( 観客動員数のピークは 昭和 33 年頃 ) 。
健司が見つけ出して ひとりで観るのは、モノクロ 全 12 巻、ミュージカル風の B 級的喜劇『 お転婆姫と三獣士 』。映写中に落雷が近くにあって停電…、再び電気が点いた時、健司は スクリーンから客席に 転がり落ちて来たらしい美雪 ( 全身、モノクロ姿 ) に気づき、腰が抜けるほど驚きます。美雪は 姿こそ美しいものの 言葉づかいは乱暴、態度は高飛車。健司を〝 しもべ 〟として扱うという ていたらく。
そこから物語はジワジワと進んでいくワケですが、ふたりが惹かれ合っていくプロセスに、当時の映画館 ( たぶん、小さな町の二番館 ) や撮影所 ( 日活と新東宝と第二東映をミックスしたような雰囲気 ) の場面が絡むところが面白い。
ロマンス劇場の支配人役・柄本明、超ナルシストの看板スター役・北村一輝、病室の謎の老人役・加藤剛らの好演もあり、笑いと共感の涙を誘う 愛すべきエンターテインメントとなっています。

ジーンと来て 目頭が熱くなったのは、次の場面 ( ジーンどころか、涙ポロポロの場面もありました ) 。
① 「 おい、しもべ! 」と健司を呼んでいた美雪が、初めて「 健司 」と呼ぶ場面。
② 「 ( 私を ) 見つけてくれて ありがとうって、ひとこと 言いたかった 」と美雪が 健司に つぶやく場面。
③ 「 〇〇に 一度だけ、抱きしめて 」と 美雪が 健司に請う場面。

綾瀬はるかは、全身がカラーになる場面以降、主に ローズウッドにベージュを少しブレンドしたような色の ソフトマットな口紅を塗っていて、それがナチュラルで美しい。気になったのは、2~3 のシーンで「 右目の視力が弱いのかな? 」と感じさせたコト。一般的に ですが、疲労が重なると そう見えやすく、また それが定着しやすいので、彼女には 極力 よく眠ってほしいです。モチロン『 SK-Ⅱ サインズ アイ マスク 』( アイシートマスク ) は マストですよね!

監督は、大ヒット作『 テルマエ・ロマエ 』シリーズの武内英樹。せつなくもドラマティックな主題歌「 奇跡 」は シェネルの書き下ろし。

P.S. チラシに使われているスティルは、1927 年の無声映画の名作『 想ひ出 』( アルト・ハイデルベルヒの物語。監督は エルンスト・ルビッチ、主演は ラモン・ノヴァロと ノーマ・シアラー ) の中の、夢以上に美しい場面を彷彿とさせます。それが「 何が何でも試写会に行こう 」と僕を奮い立たせた理由 ( 笑 ) 。その場面は 映画の中には ありませんでしたが、そんなコトは かまわない。むしろ スティルの重要性を、改めて実感させて頂きました。スティルカメラマン氏に感謝!

 

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RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016

この世界で、
ぼくは ひとりぼっちじゃなかった。

全米映画批評 No.1 サイト Rotten Tomatoes 驚異の満足度 100%!
世界中のハートを わし掴みにした 奇跡のストップモーション・アニメが、ついに日本上陸!

ぼくの名前はズッキーニ
スイス、フランス/ 66 分
2.10 公開/配給:ビターズ・エンド、ミラクルヴォイス

【 STORY 】 いつも屋根裏部屋で 絵を描いて遊んでいるイカールは、ママと二人暮らし。パパが〝 若い雌鳥 〟のもとに去ってしまってから、ママは ビールを飲んでは怒ってばかり。ある日、ビールの缶でタワーを作って遊んでいる時、ママは不慮の事故に遭い、帰らぬ人になってしまう。事故を担当した警察官のレイモンは、ママがつけた〝 ズッキーニ 〟という愛称を大切にしているイカールを 不憫に思いながらも、孤児院「 フォンテーヌ園 」に連れていく。
クラスメイトは、リーダー格のシモン、アメッド、ジュジュブ、アリス、ベアトリス。入所当日からズッキーニへの手痛い洗礼が始まる。ズッキーニは「 ママのところへ帰りたい 」と訴えるが、園長から「 それは 無理なの。ママは お空に 行ったでしょ 」と静かに諭される。シモンは そのやり取りを ドアの外で 聞いていた。
ズッキーニの心の傷を知ったシモンは、自分の両親がドラッグ中毒者であることや、他の子供たちも それぞれに複雑な事情を抱えながら園生活を送っていることを明かす。そして「 皆 同じさ。誰にも愛されていない 」とつぶやく。それ以来、ズッキーニは 心の痛みを共有する友として、シモンたちと打ち解けていく。
園に新しい入園者、カミーユがやってくる。ズッキーニの胸は 彼女を一目見た時から高鳴った。ある夜、シモンとズッキーニは園長室に忍び込み、カミーユが両親を悲惨な出来事によって亡くしたことを知る。そうとは知らないカミーユは ズッキーニと意気投合し、園を照らす太陽のような存在になっていく。
季節は めぐり、冬が到来。子供たちは ポール先生とロージー ( 注:ポール先生の奥さんで 妊娠中 ) の引率のもと、スキー合宿に出かける。ダンスパーティや雪合戦で盛り上がる子供たち。深夜、眠れないズッキーニとカミーユは、こっそり宿を抜け出した。月明かりの銀世界の中、カミーユは言う「 ここに来て、あなたに会えて よかった 」。翌日、遊び疲れたみんなが眠り込むバスの中、ズッキーニは カミーユの頬に こっそりキスをする。
ある日 カミーユの叔母が、扶養手当て欲しさに 姪を引き取ると言い出し、園に乗り込んできた。「 同居するなら死ぬほうがまし 」というカミーユに「 絶対 行かせないよ 」と誓うズッキーニ。子供たちは策を練り、助け合ってカミーユを園から 脱出させる。レイモンは 驚きながらも、ズッキーニとカミーユの願いを聞き入れる。
遊園地で楽しい時間を過ごした後、ズッキーニとカミーユは、レイモンが実の息子と会えない寂しさを抱えた父親であることを知る。夜になって カミーユを探し当てた叔母が現れ、彼女を無理やり連れ去ってしまう。ところが シモンの作戦が功を奏し、カミーユは園に留まることができた。
カミーユの帰還を祝う仮装パーティが盛大に開かれる中、レイモンはズッキーニに 彼とカミーユを引き取りたいと打ち明ける ( 後略 ) 。( プレス資料より。一部省略 )

これは 僕にとって、史上最高の ストップモーション・アニメです。本作を観るまでは、イジー・トルンカや カレル・ゼマンに匹敵するアニメーターなど もう出現しないと思っていましたが、これは少くとも 彼らの作品と肩を並べる という以上に、勝るとも劣らない出来では? と感じました。
様々な虐待というダークで悲しい設定を背景に持ちながら、このクレイアニメには 成長していく子供たちと、それを見守る大人たちの双方に 純粋さと力強さと優しさとがあり、しかも 簡潔で深いメッセージが込められている上、人形たちの 感情あふれる表情と動き、美しく鮮明な色彩、細心の注意を払った照明と構図による撮影、過剰表現ではないにも拘らず ビックリさせられるような台詞、台詞と台詞の間 ( ま ) に存在する心理的なニュアンス等々、このアニメは 特別な 高い領域に達しています。

監督は クロード・バラス ( 1973 年、スイス生まれ ) 。「 時代も年齢差をも超えて、観客を笑わせると同時に泣かせることができる希有な才能 」の持ち主で、彼の作品は「 リアリズムとユーモア、ポエトリーで満ち溢れている 」というプレス資料のプロフィール紹介文は、掛け値なし、100 %の真実。彼を中心に、この映画の制作に携わった 50 人以上の職人の仕事に、僕は心から脱帽!

P.S.1 本作中、僕が 非常に いとおしく感じた ズッキーニとカミーユの会話を、ひとつだけ 紹介させて頂きます。
「 誕生日プレゼントがあるんだ 」
「 もう過ぎちゃったわ 」
「 うん、知ってるよ。でも 3 カ月前には 会ってなかったから、今 あげるんだ 」
銀世界、眠れない月明かりの夜、流れ星が瞬く森の中での やり取り ( 僕は 日本語吹き替え版ではなく、字幕版で観賞 ) 。

P.S.2 本作は まず、読者の皆さんに観てほしいのですが、もしも皆さん ( 特に幼いお子さんをお持ちの方々 ) が精神的に開放されているようであれば、or お子さんの質問等に 自然に上手に応じられる自信と勇気をお持ちであれば、幼いお子さんたちにも「 観せたい! 」と考えるはずだと 僕は思っています ( たとえば ですが、臨月が近いポール先生の奥さんに「 おちんちんが爆発すると 赤ちゃんが できるんでしょ? 爆発した時、痛くなかった? 」などと、ジュジュブという男の子が 真剣に質問する場面等があります。僕は それも本作の 実に実に素晴らしい要素のひとつだと思っているのですが、皆さんは どう感じられるのでしょうか? ) 。

 

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(C)2017 Twentieth Century Fox

アメリカの片田舎の大通りに並ぶ 3 枚の看板に、ある日、突然 現われた 真っ赤な広告。
それは 何もない田舎町に吹き荒れる、予想もしない嵐の前触れだった――。

スリー・ビルボード
イギリス、アメリカ/ 116 分
2.1 より公開中/配給:20 世紀フォックス映画

【 STORY 】 舞台は、アメリカのミズーリ州。田舎町を貫く道路に並ぶ 3 枚の広告看板に、地元警察のウィロビー署長を批判するメッセージを出したのは、7 カ月前に 何者かに娘を殺されたミルドレッド。犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立てたミルドレッドが、署長にケンカを売ったのだ。署長を父親のように慕う暴力的なディクソン巡査に様々な嫌がらせを受け、署長を敬愛する町の人々から抗議を受けても、一歩も引かないミルドレッド。その日を境に 次々と不穏な事件が起こり始め、町に激震が走るなか、思いがけない容疑者が現れる――。( プレス資料より )

ベネチア国際映画祭で脚本賞、トロント国際映画祭で観客賞、次いで ゴールデングローブ賞で 作品賞・主演女優賞 ( フランシス・マクドーマンド ) ・助演男優賞 ( サム・ロックウェル ) ・脚本賞 ( マーティン・マクドナー ) という主要な 4 賞を獲得した、重量級の クライム & ヒューマンドラマ。さらに アカデミー賞®最有力との評判が加わって、日本のマスコミ試写会も 連日 長蛇の列。19 回めに当たる最終試写でも、入場できない方が続出するという有様…。僕は その最終試写に、上映開始時間の 85 分前から並んで ( 屋外に、です ) 、やっと観るコトができたという次第。

実は、クライムドラマそのものは 僕の好きなジャンルではないのですが、本作に関しては ファーストシーンから画面に強烈に引き込まれました。まず 編集の切れ味が最高で、タイトルバックに流れるのは 意外にも 感傷的な「 庭の千草 」( 清冽なるソプラノ ) 。冒頭の数分間で「 きっと 最後まで観応えのある、本物の映画に違いない 」と感じさせるに十分。結果は予感どうりで、中盤辺りから 一気に予想外の展開を示しながら 力強いパワーで観客を引っ張り、想像力を かき立てる 余韻に満ちたラストへと向かいます。
中盤以降の展開については、予備知識を いっさい持たずに観るコトをオススメします。ここで 僕が言えるのは、それが とても人間的だ というコト…、憎しみの感情に起因する行為の代償や、愛情と冷静な思考がもたらす 気づきや希望を含んでいる というコトだけ。

脚本と監督は『 セブン・サイコパス 』の鬼才 M・マクドナー。配役は、ミルドレッドに F・マクドーマンド、ウィロビー署長に ウディ・ハレルソン、ディクソン巡査に S・ロックウェル。
これは プロの手腕に圧倒される 真の力作。観ると決めたら、早めにチケットを入手して。

 

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(C)2016 Secret Films Limited

ルーニー・マーラ × ヴァネッサ・レッドグレイヴ W 主演!
半世紀の時をこえて紐解かれる、
壮大なる愛と真実の物語。

ローズの秘密の頁 ( ページ )
アイルランド/ 108 分
2.3 公開/配給:彩プロ

【 STORY 】 取り壊しが決まった聖マラキ病院。転院する患者たちの再診のために 病院を訪れた精神科医 スティーヴン・グリーンは、病院で 40 年もの時を過ごしてきた ローズ・F・クリアを看ることになる。彼女は 自分の赤ん坊を殺した罪を背負っていた。しかしローズは その罪を否認し、自身を ローズ・マクナルティと名乗り続けていた。グリーン医師は、ローズが大切にしている 1 冊の聖書の存在を知り、彼女に興味を持ちはじめる。ローズは 何十年にもわたって、聖書のなかに 日記を書き綴っていたのだ。彼女は 日記を辿りながら、グリーン医師に 自分の人生を語り始める――。( チラシより。一部省略 )

原作は、アイルランドの人気作家 セバスチャン・バリーが、コスタ賞 ( 英国の権威ある文学賞 ) を受賞した小説。監督は『 マイ・レフトフット 』や『 父の祈りを 』( ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞 ) で知られる ジム・シェリダン。主演は、名女優 V・レッドグレイヴ ( 老いたローズ役 ) と、『 キャロル 』で ケイト・ブランシェットと共演した R・マーラ ( 若き日のローズ役 ) 。助演は、グリーン医師役に エリック・バナ、若き日のローズの 永遠の恋人 マイケル役に ジャック・レイナー ( 『 ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出 』でエリザベス王女と行動を共にした青年役を好演 ) 、ローズに暗い情熱を燃やすゴーント神父役に テオ・ジェームズ。

ラスト近くで胸を締めつけられるような衝撃の事実が明らかになり、感動のエンディングを迎えるという 女性向きの一篇。『 あなたを抱きしめる日まで 』( 通信 211 ) や『 光をくれた人 』( Vol.393 ) 、『 愛を綴る女 』( Vol.415 ) といった作品に 激しく心を揺さぶられたという皆さんには、絶対にオススメです。

出演者は全員が適役を好演していますが、僕が非常に素晴らしいと感じたのは、ローズに付き添っている時間の多い ケイトリンという名の看護士役の女優。プレス資料に記載がないので名前は分からないのですが、ちょっとした表情にも豊かな知性と感性が溢れていて、本当に素晴らしい女優さんだと思いました。

P.S. ローズが 赤ちゃんを出産する〝 日 〟を、何となくで OK ですから 憶えておいて。そうすれば、あなたの〝 カン 〟は 誰よりも冴えるはず。

 

 

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(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾

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