大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.6.19

『 女と男の観覧車 』『 告白小説、その結末 』『 猫は抱くもの 』『 フジコ・ヘミングの時間 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.452 】

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(C) 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

ここではない どこか、もっと素敵な恋、人生が待っているはず…。

まわる、まわる、秘密の恋が回る。

女と男の観覧車
アメリカ/ 101 分
6.23 公開/配給:ロングライド

【 STORY 】 1950年代。元女優だったが、今は コニーアイランドの遊園地内で ウェイトレスとして働いているジニー。再婚同士で結ばれた 回転木馬の操縦係を務める夫、そして自身の連れ子と 観覧車の見える部屋で暮らしている。実は 彼女は夫に隠れて、海岸で監視員をしているミッキーと付き合っていた。平凡な毎日に失望していたジニーは、脚本家を目指す彼との未来を夢みていたが、ギャングと駆け落ちして 音信不通になっていた夫の娘が現れたことから、すべてが狂い始める――。( 試写招待状より。一部省略 )

『 ミッドナイト・イン・パリ 』( 通信 105 ) 、『 ブルージャスミン 』( 通信 218 ) 、『 カフェ・ソサエティ 』( Vol.391 ) 等々の ウディ・アレン監督が、『 タイタニック 』や『 愛を読むひと 』、『 ヴェルサイユの宮廷庭師 』( 通信 308 ) 等の ケイト・ウィンスレットと初めてタッグを組んだ〝 心ざわめくヒューマンドラマ 〟。
時代背景は、映画中に流れる曲から、1952 ~ ’53 年と特定が可能。舞台となるコニーアイランドのシーン、特に海水浴客で混雑している浜辺の光景は、まるでアグファカラーのネガフィルムで撮影して、イーストマンカラーのポジフィルムに焼き付けしたかのような、独得の色彩が見事なまでに美しい。

いろいろと騒がれているアレン監督 ( ’35年生まれ ) ですが、今回は 何故か再びパワーアップして、〝 女の性 ( さが ) 〟を「 これでもか! 」というほど 濃密に描き上げています。僕は 観ている間、シチュエーションこそ大きく異なるものの、『 サンセット大通り 』( ’50/ビリー・ワイルダー監督の傑作のひとつ ) での グローリア・スワンソン ( 無声映画時代の大スター役 ) の心理に相通ずる〝 恐しさ 〟があると、何度か感じました。ジニーの何が恐しいかと言うと、その嫉妬心が執らせる 半意図的な行動 ( その極めつけは、公衆電話ボックス内のシーン ) 。それを観て ゾーッとさせられてしまうのは、彼女と同じ心理が、たとえ ごく微量だとしても、観る側の心の内に存在するからでは? とも考えさせられました…。

ウィンスレットは 非常に難度の高い役どころに挑戦し、新境地を開くコトに成功しています。
心変わりするミッキー役は、ジャスティン・ティンバーレイク。音信不通だった夫の娘で、意外にも無垢な性格のキャロライナ役は、ジュノー・テンプル。

本作は、大ヒット作『 ミッドナイト・イン・パリ 』のような 楽しい楽しい作品ではないにしても、この 4 ~ 5 年ほどのアレン監督作品の中では、最も印象の濃い内容となっています。

 

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©2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma, Monolith Films. All Rights Reserved.

ベストセラー作家と熱狂的なファン――。

ふたりの女性の危うい関係に、鬼才・ポランスキーが仕掛ける戦慄のミステリー。

告白小説、その結末
フランス、ベルギー、ポーランド/ 100 分
6.23 公開/配給:キノフィルムズ

【 STORY 】 心を病んで自殺した 母親との生活を綴った私小説が ベストセラーとなった後、スランプに陥っているデルフィーヌの前に、ある日、熱狂的なファンだと称する 美しい女性 エルが現れる。差出人不明の脅迫状にも苦しめられるデルフィーヌは、本音で語り合えるエルに信頼を寄せていく。まもなく ふたりは共同生活を始めるが、時折 ヒステリックに豹変するエルは、不可解な言動でデルフィーヌを翻弄する。はたして エルは 何者なのか? なぜ デルフィーヌに 接近してきたのか? やがて エルの身の上話に衝撃を受けたデルフィーヌは、彼女の壮絶な人生を小説にしようと決意するが……。( 試写招待状より。一部省略 )

フランスで 今、最も注目されているという作家 デルフィーヌ・ド・ヴィガンの『 デルフィーヌの友情 』( 水声社刊/ 1 種の心理ミステリー ) を、『 水の中のナイフ 』『 ローズマリーの赤ちゃん 』『 戦場のピアニスト 』『 オリバー・ツイスト 』『 毛皮のヴィーナス 』( 通信 260 ) 等々の 鬼才 ロマン・ポランスキー監督が映像化した作品です。
主演は『 毛皮のヴィーナス 』に引き続き、ポランスキーの妻でもある エマニュエル・セニエと、『 シン・シティ 復讐の女神 』( 通信 266 ) や『 悪党に粛清を 』( 通信 293 ) の エヴァ・グリーン。

開巻 間もなく、デルフィーヌのサイン会にエルが現れる場面以降、映画は徐々に不可解さと不気味さを増し、現実なのか 妄想か何かなのか、よく分からない状況に陥っていきます。エルの言動は急速に支配的となり、デルフィーヌを勝手に操るマネージャーの様相を呈すのです。
デルフィーヌと共に 観る者の不安感・不快感は募るばかりですが、それを微妙な演出で打ち破るのは、ラスト近く、ガソリンスタンドの場面。デルフィーヌに近づいてくる 年配の女性との やり取り、特に年配女性の台詞には、全神経を傾けて。

本作で驚くほど感心させられたのは、E・グリーン ( ‘80年生まれ ) の肌の美しさ。今まで以上に肌密度が高く、水分と油分とNMFのバランスがベストコンディション。肌細胞だけを考えると、23 歳前後に見えるほどです。
デルフィーヌの恋人役の ヴァンサン・ペレーズ ( 『 ヒトラーへの 285 枚の葉書 』( Vol.402 ) の監督者でもある ) は、男の優しさと つれなさのバランスを、リアルにサラリと表現して秀逸でした。

 

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©2018「猫は抱くもの」製作委員会

アイドルの夢を諦めたアラサー女性と、
自分は人間だと思い込んだ猫の物語。

沢尻エリカ、6年ぶりの主演作!

猫は抱くもの
日本/ 109 分
6.23 公開/配給:キノフィルムズ

【 STORY 】 田舎町のスーパーで働く沙織は、かつて 売れないアイドルグループのメンバーだった アラサーの女性。歌手としての夢を諦め、何もかもが嫌になって東京を逃げ出してきました。自分を好きになれず、周囲にも溶け込めない彼女が心を開くのは、職場の倉庫で こっそり飼っているロシアンブルーのオス猫「 良男 」だけ。腹が立ったこと、哀しかったこと、バカバカしくて呆れたこと。今日 いちにち 誰とも共有できなかった気持ちを、ときには妄想も交えつつ、沙織は語って聞かせます。一方、そんな沙織に寄り添う良男は、自分は人間の男だと思い込んでいました。危なっかしい彼女を守ってあげられるのは、恋人である自分しかいないのだと。お互いに色々こじらせながらも、うまくやってきた 1 人と 1 匹。でも、そんな日常に 変化が訪れて……。( プレス資料より。一部省略 )

人気推理小説〝 猫弁 〟シリーズで知られる 大山淳子の同名小説 ( キノブックス刊 ) を、『 ジョゼと虎と魚たち 』『 グーグーだって猫である 』の犬童一心監督が、沢尻エリカ ( 沙織役 ) と吉沢亮 ( 猫の良男役 ) を主演に迎えて映像化した〝 猫映画の決定版 〟。
実際の猫に加え、俳優たちが擬人化された猫を演じる上、実際の風景の中で撮影された〝 実景パート 〟と、回り舞台のセットを想わせる〝 舞台パート 〟、さらに 手描き風の〝 アニメーション・パート 〟が モザイクのように組み合わされているという ユニークな構成。それらを通じて、沙織と良男の心情を 綿密に描き出しています。

少々モタつきを感じたのは〝 舞台パート 〟。演劇で 回り舞台によって場面が転換する際には感じた憶えのない間延び感を、映画では感じるなんて ヘンだとは思うのですが…。
もうひとつ、〝 ねこすて橋 〟の下の河原のような所に、10 匹ほどの擬人化された猫が集まって会話をする夜の場面に、冴えが感じられなかったコトも気になりました。

沢尻エリカ ( ’86 年生まれ ) は 大人の女優に成長していて、その姿を見ながら〝 姉妹の 愛情と確執 〟を題材としたような本格的なドラマに、宮沢りえと姉妹役で共演したら、きっと いゝ…などと、僕は勝手な想像を膨らませたりもしていました。
吉沢亮 ( ’94 年生まれ ) は『 オオカミ少女と黒王子 』( Vol.342 ) に脇役で出演しているのを初めて観た時、「 不思議なほどの美少年 」と思いましたが、少しの間に かなり大人になった印象。ブラウンのシャドウを用いた場面での眼の表情に、ドキッとさせるほどの魅力が出ています。たゞ 気になったのは、ピンクのパンツ姿のヒップが 下がって見えたコト…。衣裳担当者さんは、少しでも縫い直してあげるべきだったと思います。
その他、売れない画家・ゴッホ役の峯田和伸、猫のキイロ役のコムアイ、沙織のアイドル時代の仲間・時子役の林田岬優が適役を好演。もうひとり、猫のキジトラ役の小林涼子のプロポーションの良さには、目を見張るばかりでした!

 

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(C) 2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ

心震えるワールドツアーでの演奏、
愛する猫たちに囲まれての暮らし…。

輝き続ける彼女が教えてくれた生きるヒント。

フジコ・ヘミングの時間
日本/ 115 分
6.16 より公開中/配給:日活

【 INTRODUCTION 】 60 代後半でデビューして以来、80 代になった今でも世界中で演奏活動を続ける フジコ・ヘミング。ヨーロッパ、日本、北米南米と、世界を股にかけて行われるコンサートの数は 年間 約 60 本。チケットは即完売で 新たなオファーも絶えない。その情感あふれるダイナミックな演奏は多くの人の心をとらえ、〝 魂のピアニスト 〟と呼ばれている。
本作は、そんな フジコ・ヘミングを 2 年間にわたって撮影し、これまで明かされることのなかった彼女の素顔を解き明かす 初のドキュメンタリー映画だ。( プレス資料より )

お気に入りのアンティークと猫たちに囲まれた パリのアパルトマンでのクリスマス、宮大工にリフォームを依頼した古民家で過ごす 京都の休日、留学時代の想い出が宿る ベルリン郊外への旅 etc etc、初公開となるプライベート映像満載の 115 分 ( 勿論、各国での演奏シーンも、多数 盛り込まれています ) 。

日本人ピアニストの母と スウェーデン人アーティストとの間に生まれたフジコは、戦時中、配給制の食糧を「 もらえなかった 」というツラい話や、家族を置いて日本を離れたまゝ音信不通となった父の記憶 等々を、少女時代の貴重な絵日記を紐解きながら語ります。それは 乗り越えなければならない障害が実に多かった、波瀾万丈の人生…。
終盤、父が描いたポスターの原画と対面するシーンでは、何かを言いかけたものの、カメラを意識してか、それを呑み込んだ彼女に、僕は 親しい友人に対するような、複雑な感覚を覚えました。

彼女のモノローグの中から、印象的だった 3 つを 書き留めておきます。
「 私の日々の行ないと精神状態は、演奏に 全部 出ちゃう ( 笑 ) 。それは、分かる人には分かる。分からない人には分からない。」
「 ( お気に入りの 古い食器に たとえて、 ) どこか欠けていても、かまわないじゃないですか。それと同じで、少しぐらい演奏を間違えても、そんなの、大丈夫でしょ。」
「 あと 何年 生きられるか…。死んだら 天国へ行くでしょ。そしたら、みんなに また会えるわね。でも、楽しいコトばかりあって、悲しいコトがないっていうのは、どうかと思って。センチメンタルなのも、いゝじゃない…。」

企画・構成・撮影・編集・監督の小松莊一良の仕事には、フジコ・ヘミングへの深い愛情と尊敬の念が感じられました。115 分に まとめるのは、タイヘンな作業だったでしょうと 想います。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
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( 個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾

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