大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.11.13

『 チェコ・スワン 』『 おかえり、ブルゴーニュへ 』『 マダムの おかしな晩餐会 』『 母さんが どんなに僕を嫌いでも 』試写室便り【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.474 】

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いくつになっても、友達と一緒に笑って、
好きなことをする、幸せ。

チェコの ある村を舞台に、ヘンテコだけど 愛おしい〝 スワン・ダンス 〟を踊る おばちゃん達の物語。

チェコ・スワン
ポーランド、チェコ/ 52 分
11.24 公開/配給:コピアポア・フィルム

【 INTRODUCTION 】 チェコの ある村の おばちゃん達は、お酒と おしゃべりと 踊ることが大好き。みんなで 料理を持ち寄って、盛大に飲み食いし、歌って笑い合う。時には おめかしをして、お客さんの前で ダンスチームとして踊る日々を送っていた。
そんな彼女達には 新たな夢があった。誰もが知るバレエダンスの傑作「 白鳥の湖 」を踊りたい! 指導者として やってきたのは、プロのバレエ団で「 白鳥の湖 」の主演に抜擢されたばかりの、若くて才能溢れるバレリーナ、マルケタ。そして ついに 特訓が始まる。初めてのバレエシューズ、初めての本格的なレッスン。果たして、おばちゃん達は 踊れるようになるのか…!? ( チラシより )

東欧映画界の新星 アレクサンドラ・テルピンスカ監督によるドキュメンタリー。これは、人生を豊かにしたいと心から願っている全女性に、絶対 オススメ、イチオシの映画です。僕は ニコニコ顔で おばちゃん達を見つめながら、何度も何度も胸を打たれて、涙をチョロチョロとコボしました。そして、もしも 来世で 女に生まれたなら、このおばちゃん達の 仲間に入りたいと思いました。

普段は 畑仕事で、雑草を抜いたり、害虫を駆除したり、ガチョウの面倒を見たりしている おばちゃん達は、みんなで 揃ってダンスをするのが 大好き。村のお祭りや余興で、民謡やフレンチカンカンを披露したりして喝采を浴びているのですが、このところ、ちょっとマンネリ気味……。
そこで、リーダー格のハナさんが、厚かましくも プロのバレエ団の演出家に連絡をして、マンネリ打開のための〝 指導 〟を受けるコトになります。その演出家は 心の広い男性で、なんと おばちゃんグループを、アトリエに招き入れてくれるのです。しかも バスでやってきた一行が、単なる〝 お笑いショー 〟的なダンスをしようとしているワケではないと理解し、プロの新進バレリーナであるマルケタを、特訓のためのトレーナーとして呼び寄せてくれました。
おばちゃん達は、体が 重いし、硬いし、右と左を間違えるし、明らかに限界があるにも拘らず、全員が 一致団結してレッスンを重ねます。その姿と顔は、まるで 無垢な少女のよう……。それでいて、年齢を重ねた女性としての 分別、度胸、包容力、ユーモア等の感覚が身についていて、時には 先生であるマルケタを 励ましたり、勇気づけたりもします。そして モチロン、最後は 村の大きな養老院で「 白鳥の湖 」を踊り、観客の おばあちゃん、おじいちゃん達を喜ばせ、感動させるのです。

印象に残った言葉を、ひとつだけ、御紹介しておきます。
休憩時間の雑談中に、ハナさんが マルケタ先生に、ちょっとプライベートな質問をします。「 恋は していますか? 」と……。「 目下、フクザツな状況で…… 」と、マルケタ先生が 少々 デリケートな笑顔で答えました。そこで ハナさんは、次のように言いました。
「 不幸の裏には 幸せが あり、よ。人生の先輩の 私たちが 保証しますよ 」。

P.S. 本作の公開は、上映回数が 非常に限られています。それに関しては、 、または 03-3280-0099 ( 上映場所である 恵比寿ガーデンプレイス内、東京都写真美術館ホール ) に問い合わせてみてください。

 

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(C) 2016 – CE QUI ME MEUT – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA

故郷 フランス・ブルゴーニュのワイナリーを継ぐため、10 年ぶりに再会した三兄妹。

悩みは たくさんあるけれど、
季節と共に移ろう愛しい日々。

おかえり、ブルゴーニュへ
フランス/ 113 分/ PG 12
11.17 公開/配給:キノフィルムズ

【 STORY 】 フランス・ブルゴーニュにある ドメーヌ ( 注:ブルゴーニュ地方のワイン生産者 or ブドウ園そのものを意味する ) の長男 ジャンは、10 年前、世界を旅するために 故郷を飛び出し、家族のもとを去った。その間、家族とは音信不通だったが、父親が 末期の状態であることを知り、故郷へと戻ってくる。
家業を受け継ぐ妹のジュリエットと、別のドメーヌの婿養子となった弟のジェレミーとの再会も つかの間、父親は亡くなってしまう。残されたブドウ畑や自宅の相続をめぐって さまざまな課題が出てくるなか、父親が 亡くなってから初めての ブドウの収穫時期を迎える。3 人は 自分たちなりのワインを作り出そうと協力しあうが、一方で、それぞれが 互いに打ち明けられない悩みや問題を抱えていた…。( プレス資料より。一部省略 )

ブドウ畑 & ワイン造りのドキュメンタリーのような内容であると同時に、三兄妹の人生の物語。モデラートなテンポでいて キレが良く、回想シーンの巧みな捜入によって、ワインそのものには余り興味を抱いていない人をも、徐々に引き込んでしまう一篇です。三人三様の立場 & 微妙に揺れ動く心情を じっくりと丁寧に描いているためか、113 分が やゝ長く感じられます。
しかし、中盤 = ブドウの収穫シーン辺りから、三人の抱えている問題が 具体的に浮かび上がり、さらに 後味の良いラストに至るまでの展開が、とても濃密で感動的でした。

三兄妹は 激しい口論もするのですが、単なる我がまゝをブツけ合うケンカとは違っていて、三人兄妹って いゝものだなぁと 感じさせるだけのニュアンスに満ちています。
この映画は、気持ちと時間に余裕のある状態で観るコトが大切。そのほうが、三人それぞれの問題に寄り添うコトができると、僕は感じました。

この物語には、重要なポイントとなるシーンが 幾つかあるのですが、そのひとつは、亡くなった父親のジャンパーを引っ張り出して身に着けた弟のジェレミーが、その内ポケットに入っていた ジャン宛ての 父の手紙を見つけて、ジャンに手渡す部分。郵送されなかった その手紙が、父親に対するジャンの誤解を 解く鍵となる件りです。それが 病院に 父親 ( 耳は聞こえているが、声は出せない状態 ) を見舞った時のフラッシュバックに繋がって、ジャンと観客の胸を激しく打ちます。

演出として見事だったのは、ラスト近く、ジャンが 幼い息子を寝かせつける寝室の場面。突然、ベッドの反対側で、少年時代の自分を 父が寝かせつけようとしている姿を見るという、不思議な場面が出てきます。そこで 現在のジャンと ほゞ同年齢の、まだ若かった頃の父と 現在のジャンが、一瞬、眼と眼を合わせるカットへと続くのですが、それは 鳥肌が立つほど 美しい瞬間でした。
さらに、その少し後、窓辺に立つジャンが、少年時代の自分と会話を交わすという場面があり、それも とても良かったです。

この映画が 観客に そっと教えてくれる 大切なコト……。それは、「 愛情は、やはり、口に出して伝えるべきだ 」というコト ( そうしなければ、気持ちが少しも伝わらない場合もあるというコトを、ハッキリと示す場面が出てきます ) 。

もうひとつ。脇筋ながら印象的だったのは、ブドウの収穫のために雇われた季節労働者たちと ジュリエットとの間に起こる〝 一悶着 〟。これは 詳しくは 書きませんが、昔、グラースのジャスミン畑で 僕が 実際に眼にした小さな出来事と、本質的に 同一の〝 一悶着 〟であり、僕は 相当に 興味深く観てしまいました。

主役の三人 ( ジャン役は ピオ・マルマイ、ジュリエット役は アナ・ジラルド、ジェレミー役は フランソワ・シビル ) は、完璧な適役を揃って好演。加えて、ドメーヌに長く務めているらしい マルセルという男性が、本物の使用人に見えたコトも 特筆に価します。
監督は、『 猫が行方不明 』『 ニューヨークの巴里夫 ( パリジャン ) 』等の セドリック・クラピッシュ。撮影は、『 子供が教えてくれたこと 』( Vol.455 ) の アレクシ・カヴィルシーヌ。

 

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© 2016 / LGM CINEMA – STUDIOCANAL – PM – Tous Droits Réservés

マダムが開く豪華ディナーに
招かれざる客 ( メイド ) が ひとり。

客の紳士が 彼女に ひとめ惚れしたことから、
セレブ界は大騒動!

マダムのおかしな晩餐会
フランス/ 91 分
11.30 公開/配給:キノフィルムズ

【 STORY 】 エレガントなパリの都に越してきた、裕福なアメリカ人夫婦のアンとボブ。セレブな友人たちを招いて とびきり豪華なディナーを開こうとするが、手違いで 出席者が 不吉な 13 人に! 大慌てで スペイン人メイドのマリアを〝 ミステリアスなレディ 〟に仕立て上げ、晩餐会の席に座らせる。ところが、緊張のあまり ワインを飲みすぎたマリアは お下品な〝 ジョーク 〟を連発、逆に これが 大ウケして ダンディーな英国紳士から求愛されてしまう。今更 正体を明かせないアンとマリアたちの から騒ぎの行方は…? ( チラシより )

ブルジョワの暮らし振りを覗かせながら、階級社会や夫婦の危機、移民組の労働者の立場までをサラリと描写。刺激と毒気を程よく振り巻いて楽しませてくれる、ちょっぴりビターな 1 種のロマンティックコメディ。

アンを演ずるのは トニ・コレット ( ’72 年生まれ ) 。彼女は 夫のボブ ( ハーヴェイ・カイテル、’39 年生まれ ) を前妻から〝 略奪 〟したというキャリアの持ち主。相当にナルシスティック かつ 嫉妬深い性格……。それが メイドのマリアの純真さとの対比によって、増幅して見えてくるところが 面白い ( T・コレットも「 役の性格の醜い部分を意識して演じた 」という主旨の発言をしています ) 。

マリア役は〝 世界一美しい鷲鼻の持ち主 〟〝 超個性派 〟と評されている ロッシ・デ・パルマ ( ’64 年生まれ ) 。ラストで「 マリアは これから、どうなるのだろう、どうするのだろう 」と、観る者を心配させてしまうから、彼女のキャスティングは大成功。

しかし、セレブなお客様方の配役は 少々貧弱で物足りない……。伏線の伏りかたやユーモアのセンスも いまひとつで、もしも エルンスト・ルビッチ or ビリー・ワイルダー辺りが 脚色・監督したなら、この物語は もっと もっと愉快な、抱腹絶倒の映画になったはず。あ、これは、かなり意地の悪い発言ですよね。アンの性格が 乗り移っちゃったのかも

 

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(c)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会

いつもキレイで、いい匂いがした お母さん。
でも、ちょっとだけ 寂しそうだった お母さん――

20 年以上、母の愛を諦めなかった息子の実話。

母さんがどんなに僕を嫌いでも
日本/ 104 分
11.16 公開/配給:REGENTS

【 STORY 】 歌川タイジは 幼い頃から 美しい母・光子のことが 大好きだった。だが、家の中にいる光子は いつも情緒不安定で、タイジの行動にイラつき、容赦なく手を上げる母親だった。17 歳になったタイジは、ある日 光子から酷い暴力を受けたことをきっかけに、家を出て 1 人で生きていく決意をする。
努力を重ね、一流企業の営業職に就いたタイジは、幼い頃の体験のせいで、どこか卑屈で 自分の殻に閉じこもった大人になっていた。しかし、かけがえのない友人たちの言葉に心を動かされ、再び 母と向き合う 決意をする。( チラシより )

母親から拒絶され、虐待を受けながら育った主人公が、母親を慕う気持ちを少しも失うコトなく運命に立ち向かい、ついには〝 奇跡 〟を起こすまでの物語。実体験を基に書き綴られ、大きな反響を呼んだ 歌川たいじの同名小説 ( KADOKAWA 刊 ) の映画版です。
監督は 御法川修、脚本は 大谷洋介。主演者は、17 歳以降のタイジに 太賀 ( 幼少期のタイジ役は 小山春朋 ) 、その母・光子に 吉田 羊。

これは 断じて〝 お涙頂戴映画 〟などでは ありません。しかし 上映館に入る際には、ハンカチ or 濡れても破れない ティッシュペーパー類の用意が 必要。可哀相すぎて泣ける場面も多々ありますが、それよりも タイジの一途さ、素直さ、母親への思いの強さに、胸が詰まる or 締め付けられて、思わず涙が 溢れ出すからです。そして また、タイジを見守り 励ます 婆ちゃん ( 親族ではなく、タイジが生まれる前から、タイジの父親が経営する工場で働いてきた従業員。演ずるのは 木野 花 ) や、成人後に知り合って 親友となる キミツ ( 森崎ウィン ) 、カナ ( 秋月三佳 ) 、大将 ( 白石隼也 ) 、さらに 婆ちゃんの弟 ( おかやまはじめ ) の人間性・優しさ・誠実さに触れて、涙がコボレてくるからです。

タイジは おそらく、並ではない 純粋な魂を持って、この世に生を受けた男の子。そして そんなタイジだったからこそ、天使の生まれ変わりのような人たちが 彼のもとに現われ、互いに引き合うようにピタリと寄り添う……。本作は いゝ意味での〝 類は友を呼ぶ 〟という格言を、改めて信じさせてくれる映画でもあります。
母・光子は、異様なまでにプライドが高く、それ故に孤独で、外ヅラが いゝ反面、家の中では常に苛立っていて、八ッ当たりのように 度々 タイジに暴力を振るいます。その原因が どこにあったのかは、後半、一気に分かってきます。

この映画は、構成から編集に至る全てが 相当に行き届いている上、僕が 想像していたよりは 暗くもユーウツでもありませんでした。ファーストシーンは、タイジが 歌いながら〝 まぜごはん 〟( 彼の一番好きな御馳走 ) を作っているシーン。ネタバレは N G かも ですが、ラストは 三人の親友 + 一名が、それを食べにやって来るという、ほのぼの & しっとりとした、明るい場面で終ります。エンディングに流れる ゴスペラーズの主題歌も 清々しく澄みきっていて、とても 心地良く感じられました。

最後に、印象に残った台詞を少しだけ、正確では ないとは 思いますが、書き留めておきます。
「 欠陥が あることを含めて、人間って 完璧なんじゃないかな 」( カナの恋人の大将が、浜辺でタイジに言う台詞 )
「 タイジは、ウチの子に なればいい 」( 同じく浜辺で、カナが タイジに言う台詞 )
「 声にしないと 伝わらないことって ありますよね。後悔しないために、今からでも 遅くないんじゃないかな 」( 婆ちゃんの弟が、ある葉書を示しながら、タイジに言う台詞 )
「 母さんが 作ったのと、おんなじ味でしょう? 」( ラスト近く、タイジが作った〝 まぜごはん 〟を、光子に食べさせながら、タイジが 光子に 聞く台詞 )

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾

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